2009年12月23日水曜日

水冷のススメ

Pentium4時代の後期、あまりにもホットなCPUを冷やすため、PCの水冷パーツも非常にホットな盛り上がりを見せていましたが、Core2の発熱の少なさに世間の水冷熱もすっかり冷めてしまったと思っているアナタ!

水冷は爆熱のPrescottを冷やすためだけの物ではありません。今日は水冷の良さを紹介したいと思います。

CPUを単体で購入するとCPUクーラーが付属してきますが、最近のものは回転数が温度制御されたりと高機能です。CPUの負荷の低い時には、回転数も抑えられ非常に静かですし、負荷が高いときは回転が上がり十分な冷却性能を発揮してくれます。ただ回転が上がった時は、結構耳につく音がします。また、オーバークロックしたり、CPU電圧を上げたりすると、そもそも冷却が追いつきません。

そこで、別売のCPUクーラーの出番ですが、よく冷えるようにと大型化、特にヒートパイプが使われるようになってからは、こんなのケースに収まるのかというようなサイズになっています。重量面でも、本体がアルミ製ならともかく、銅製だと相当な重さになるでしょうから、ちょっとマザボが心配。少なくともCPUとヒートシンクの密着度が悪くならないようにマザボのタワミ対策が必要ではないでしょうか。

そして忘れてならないのは、CPUクーラーが周囲の空気をファンで吹き付ける事によって冷やしている以上、周囲の空気以下には決して冷えない事です。例えば、PCケースの中の温度が50度あるとすると、CPUクーラーはファンによって50度の温風を吹きつけているわけです。そんな熱い風を吹きつけていたのでは、CPUが冷えるわけがありません。したがって、CPUクーラー自体の性能だけでなく、できるだけ冷えた空気を吹きつけることが重要なのですが、そのためにはPCケースの通風を良くして、PCケース内と室温との温度差をできるだけ小さくする必要があります。

最近のPCケースは、通風を良くするためにフロントパネルがメッシュ構造だったり、ケースファンをたくさん搭載してます。こういったケースは、冷やすためには都合が良いですが、とにかくうるさくなってしまいます。ケースファンの追加は単純に騒音源の増加ですし、メッシュだと遮音性が低くケース内のノイズを抑えてくれません。

ゲームでは、言うまでもなくサウンドの効果が非常に大事です。うるさいPCがそばにあると、ゲームの小さな音がマスクされて聞こえなくなります。また、雰囲気のあるホラーゲームは、しんと静まり返った部屋で遊びたいのに、PCからゴーゴー音が出ていたら興ざめでしょう。よりゲームを楽しむために、オーバークロックできる冷却性能と静音性を両立させたいと考えたことはないでしょうか。その場合にお勧めなのが水冷です。

リテールクーラーや普通の別売CPUクーラーは、空気を吹きつけて冷やすので空冷と呼ばれますが、水冷ではCPUを水で冷やします。ただ空気と違って、水は無制限に供給できるわけではありませんから、一定量の水をポンプで循環させます。冷たい水でCPUを冷やし、それによって温められた水をPCケースの外で空気を吹きつけて再度冷やすわけです。

これらを言い換えれば、CPUのすぐ近くで熱を発散させるのが空冷、いったんPCケースの外まで熱を運んでから発散させるのが水冷です。水は熱をケースの外まで運ぶのに使っているに過ぎません。結局は空気を当てて冷やすので空冷でもあります。ただ、ケースの外まで運んでから冷やすことには、いくつか大きなメリットがあります。

  • 大きなファンが使える
    CPUで温められた水を冷やすため、ケースの外にラジエターを付けます。そしてラジエターに風を当てるためのファンも取り付けます。このファンがうるさいと静音化にならないわけですが、ケースの外なので、大きなファンを使うことができ、その分ファンの回転数も落とせるのでとても静かになります。

  • 冷たい空気で冷やせる
    PCケース内で空冷するとなると、PCケースのファンには相当頑張ってもらわないとCPUに温風を当てる事になってしまうわけですが、水冷の場合はラジエターを外に置くので、いつも室温の冷たい空気を当てることができます。

  • ケース内の熱源が一つ減る
    PCケース内の熱源は色々ありますが、ゲームを遊べるように構成したPCなら、CPUとビデオカードが2大熱源です。その片方であるCPU熱がPCケース内からなくなることは、ケース内の換気をかなり楽にしてくれます。特にミドルクラス以上のビデオカードでは、PCケース内から吸気してケースの外に排気する”外排気”になっているため、元々PCケース内には大した熱を放っていないかもしれません。そうなるとさらにCPU熱がなくなることの効果が大きくなります。

逆にデメリットとしては、次の3つでしょうか。

  • 初期コスト
    水冷では、水冷ブロック、ラジエター、ポンプ、リザーバーといったパーツが必要です。他にフィッティングやチューブ、冷却水を等も合わせると、パーツの種類にもよりますが3万円くらいの初期投資になります。ただし、CPUが変わっても使い回しできるので、長くは使えます。

  • 組み立てが面倒
    組み立て時には、通常の自作PCが電気的な接続だけ気にすればいいのに対して、水冷では水のラインも接続しないといけません。チューブの引き回しに、あまり急な角度で曲げるとチューブがペコッと折れて水が通りにくくなるため注意が必要です。

  • メンテナンス
    メンテナンスとしては、循環水の補充がありますが、最近はパーツが良くなっているので、ほとんど減りません。私は平均して3ヶ月に1回くらいはPCケースを開けてますが、そのタイミングで気づいたら数cc程度補充するくらいです。

水冷がうまくいくかどうかは、パーツ選びにかかっていると言って過言ではありません。これまでの経験から、私が気を付けていることを挙げておきます。

  • 水冷ブロックについて
    水冷ブロックは、CPUに直接接して、CPUの熱を循環している水に伝えるのが役目です。そのためCPUのヒートスプレッダと接する面は、平面度が高く、鏡面仕上された密着度の高そうなものが良いです。また、水が通る部分の作り次第で、熱抵抗(CPUの熱をどれくらい水に伝えられるか)と圧力損失(水の通すのに必要な圧力)が変わってきます。パーツ選びには、あまり奇をてらわず、定番商品を選ぶのが無難です。さらには、CPUが変わっても取付金具だけで買える製品の方が経済的なので、そういったパーツが発売されているかもポイントです。あと取付金具については、ブロックをCPUに押し付けたあとでも、ブロックをグリグリと多少動かせるような構造の取り付け金具が好きです。それだと薄く塗ったグリスをしっかりと馴染ませることができるからです。

  • ポンプについて
    水を循環させるポンプには、熱帯魚水槽のポンプをベースにした物と、床暖房のポンプをベースにした物がありますが、対象とする水温に違いがあります。PCの水冷では循環水が30度以上になるため、熱帯魚用のポンプは寿命が短くなります。また、熱帯魚用のポンプは、砂利等を吸い込んでも詰まらないように、オープンインペラが使われているため、水量はあっても水圧が低いものが多いです。PCの水冷用途で大きな異物が流れてくることは考えられないので、床暖房用のクローズドインペラを採用した物を選ぶべきです。

  • リザーバーについて
    リザーバーは、ポンプの直前で水を貯めておく容器です。ポンプが送り出すための水をいつでも供給できるようにある程度の容量が必要です。小さすぎるとポンプがエアーを噛んでしまって、冷却水が熱を効率良く運べなくなります。設置場所は中身の水が自然にポンプに流れ込む位置ならどこでも良いと思いますが、私はポンプと一体型の物をPCケース内に設置しています。水の補充をし易くするためにPCケースの外側に設置する場合もあります。

  • ラジエターについて
    ラジエターは温められた水を効率良く冷ますためのものですが、せっかく大きさに制約のないPCの外に置くのであれば、少し大きめの物を使うのが良いでしょう。そうすれば、ファンはユルユルと低回転で回しておくだけで冷却は十分間に合います。

    私は12cmファン2つ分のサイズのラジエターを使っています。これは本来、ラジエラーの表と裏に2つずつ、計4つの12cmファンをつけて使うものなのですが、今の構成だと片面に2つの1200rpmの低回転ファンを付けるだけで十分です。

  • フィッティングについて
    水冷ブロックやラジエター等のパーツは、チューブの接続部分の部品(フィッティング)が自由に取り替えられるようになっており、色々な太さのチューブに対応できるようになっています。またチューブの固定方法にもいくつか種類があり、それぞれに対応したフィッティングが売られています。

    チューブの固定方法は、水道の蛇口にホースを付けるような感じのバーブ、固めのチューブを押し込むだけで固定できるプラグイン、差し込んだ後キャップで固定するフェルールレスがあります。柔らかいチューブが使え、接続も簡単で確実なフェルールレスがお勧めです。

  • チューブについて
    私の場合は最初に使い始めた機材の関係で、内径8mm・外径10mmのホースを使用しています。太い方が圧力損失は少ないですが、PCケース内での取り回しが大変になります。

  • 冷却水について
    冷却水は水路を流れる上でアルミや銅等の異種金属に接するので、電蝕を防ぐために、ベースとなる精錬水に、電蝕を防ぐための薬品(防蝕剤)を混ぜて使用することが絶対です。精錬水はコンタクトレンズを洗うための水として、薬局で500ccのボトルが100円前後で売られています。それに防蝕剤を指定濃度で混ぜ合わせて使用します。

  • その他小物
    一度冷却水を通してしまうと、水が溢れるためチューブを安易に外すことはできなくなりますが、パーツの入れ替え等のメンテナンス時にあると便利なのがチューブクランプです。これはチューブを外から挟んで圧迫し、水が流れないようにする器具ですが、これがあると、チューブを外しても少量の水が溢れるだけですみます。あと、頻繁に取り外すところにはカップリングを使うと便利です。カップリングは、水をほとんど漏らさずにチューブを分断したり接続したりできるものです。私の場合、PC本体とラジエターの間にカップリングを入れて、ラジエターだけは簡単に切り離せるようにしてあります。

  • 水冷キットについて
    水冷を始めるのに必要なパーツを一通り揃えたキットが売られています。最初の取っ掛かりとしては良いのかもしれませんが、その構成に首をかしげたくなる物もちらほら見かけます。

    例えば、ラジエターまでもPCケース内に収める構成の物がありますが、既に書いた通り、水冷のメリットは室温でラジエターを冷却することにあります。PCケース内の温風で冷やすのなら、わざわざ熱を他の場所に移動する意味がありません。同じく、PCケースの背面、ケース内の温風の吹き出し口にラジエターを設置したものがありますが、これも同じ事、ナンセンスです。

    5インチベイに取り付ける水冷キットなんて物もありましたが、5インチベイの位置というのはPCケースの天板にファンがついてない限り、最も空気の流れの悪い、熱くなるところです。そんな澱んだところでラジエターを冷却しようなどとは本末転倒もいいところ。CPUが冷えないだけでなく、光学ドライブや電源を熱で壊したいのかと思ってしまいます。

    キットを買うなら、最低限の条件として、ラジエターはPC本体から離して設置できるものを選んでください。フィッティングにフェルールレス以外が採用されてるものは水漏れに十分注意してください。というか、そんなものは選ばない方が無難です。

余談ですが、ビデオカードも以前は水冷にしていたのですが、ここ最近はやってません。今回のビデオカードも、今のところノーマルのままです。ビデオカード用の水冷ブロックは、機種毎の専用設計で使い回しできず、値も張ります。水冷化すればしたで、ビデオチップのコアやメモリのオーバークロック、高負荷時の静音化で確実な効果があるのですが、ビデオカード自体がCPU以上にサイクルの短いパーツなので個人的にちょっとペイできない感じです。

ただ、水冷にしなくても、CPUを水冷にしたことでPCケース内の温度が下がれば、ビデオチップに吹き付けられる空気の温度も下がっているので、多少の効果はあるかと踏んでいます。

あと、チップセットやメモリ用の水冷ブロックも発売されてますが、常用PC程度のオーバークロックでは必要なさそうです。なにより、元々ファンが付いていない箇所は、水冷化しても静音化につながらないのでモチベーションが上がりません。

最後に、現在使用しているパーツについてですが、何度かの失敗の経験を基に上で書いていたことを加味してパーツ選択したつもりなので、参考までにリストアップしておきます。もっとお勧めの物があれば、ぜひ教えてください。

クーリングパーツ
水冷ブロック: Alphacool NexXxoS XP Silver
ポンプ: Laing DDC-1 RT
リザーバー: Alphacool reservoir for Laing DDC Pumps
ラジエター: Black Ice GT Stealth 240
ファン: XINRUILIAN RDL1225S(12LN) x2

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